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フェニックス(120万人)・メサ(50万人)

  • フェニックスはアリゾナ州の州都で同州最大の都市である。砂漠の中にありながらも全米有数の工業都市である。メサは、その東方に位置しており、成長著しい大都市フェニックスの郊外都市である。

  • フェニックス都市圏の水道は、主として、アリゾナ州を含む8つの州にまたがるコロラド河からの導水事業と、都市圏の東方の山岳地帯からの導水事業に依存しているが、域内の地下水や下水処理水の再利用なども行っている。

    • SRP:州内のSalt川、Verde川、東部クリークからの水を貯留する7つのダムを管理している導水路事業の名称であり、その運営主体の名称でもある。都市圏の半分以上の水がこのSRPから供給されている。

    • CAP:コロラド河にの水をカリフォルニア州とともに分水するための供給しており、SRPに次ぐ2番目の水源である。

    • 再生水:人の食べない穀物の灌漑用水や家庭の修景用水などに使われている。

    • 地下水:SRPは、表流水導水の補助的水源として270の井戸を保有している。各自治体も、個別に、地下水水源をもっている。

アリゾナ州の位置図

アリゾナ州の位置図

フェニックス市の位置図

フェニックス市の位置図

メサ市の位置図

メサ市の位置図

フェニックス都市圏の水道:SRP導水事業
SRP:Salt River Project

  • SRPの歴史は1903年にまでさかのぼる。1903年、地域の牧場主や農業団体が、この地域の牧場主や農民が、Salt Riverの洪水を防ぎ、地域開発を進めるため、連邦政府にTheodore Rooseveltダムの建設を中心とするSRPの事業の必要性を訴えた。

  • 彼らはSRPの資金調達のため、今日の、組織としてSRPの前身となる「Salt River Valley利水者協議会」を設立した。

  • SRPの業務は、アリゾナでの最初のダムであるルーズベルトダムとともに始まり、この地域の数百万人の住民に水を送るための貯水池、川、ダム、運河などの水資源開発事業に成長していった。

  • SRP事業は、ソルト川及びヴェルデ川とEast Clear Creekの流域の7つの貯水池を運用するものである。フェニックス都市圏の水の半分以上はこのSRP事業からもたらされている。コロラド川からのCAP導水よりもその割合は大きく、CAP導水は2番目である。

  • SRPの水はフェニックス都市圏全体に供給されているが、乾燥地帯における水の有効利用のため、その下水処理水も、もう一度、非食物用穀物の灌漑用水や修景用水等のために再利用されている。

 

【現在の課題】

  • 貯水池容量の拡大:2024年度、SRPは、Rooseveltダムの洪水調節のための調節容量を、5年間の水計算期間において20日間から120日間に拡大するダム操作規則の変更の検討を始めた。この変更は、SRP、連邦政府の陸軍工兵隊及び干拓局、その他自治体やインディアン保護区や農業団体などとの協力の中で計画されたものである。

  • この操作により下流に放流しないことによって、去年であれば1.3億m3を余分に貯留できた。この水量はフェニックス市住民の33万人分の生活用水に相当する。この計画は、この地域の温暖化と降雨量減少に対応するためのもっと大きな計画の一部になっており、旱魃期間中のこの地域の水を確保することに重点を置いている。
    SRPはこの他、雨期の洪水をもっと利用するために、今後10年間でVerde川水系の貯水量を増やすことを考えている。

Salt川流域とVerde川流域の位置

Salt川流域とVerde川流域の位置

SRP事業の主要な施設(貯水池・導水路)

SRP事業の主要な施設(貯水池・導水路)

フェニックス都市圏の水道:CAP導水事業
CAP:Central Arizona Project

  • CAP:Central Arizona Projectは、コロラド川のHavasu湖(パーカーダム)からツーソン市南西部の終点までの、延長530kmの導水路である。コロラド川からの取水枠として17億m3/年の権利を持っている。Havasu湖(パーカーダム)は、右岸のカリフォルニア側に導水するコロラド導水の起点でもある。

  • CAPの主たる施設は、トンネル4、サイフォン10、ポンプ場14、ラジアルゲート39、分岐箇所50以上である。このほか、導水路の中間あたり、フェニックス市の北方にあるPleasant湖が、CAP導水全体の流量調整機能を果たしている。

  • 導水開始は1985年、そのうち都市水道に54%、ネイティブ保護区に46%供給している。地域的には、Maricopa・Pinal・Pimaカウンティに供給しているが、この地域の人口はアリゾナ州の全人口の80%を占める。

  • CAPの運営主体は​CAWCD:Central Arizona Water Conservation Districtである。CAWCDは、課税権のある、複数カウンティにまたがる特別自治体である。Maricopa、Pima、Pinalの3カウンティから選出された15人の理事で構成されている。CAP導水事業は水路延長530kmで、Havasu湖からツーソン市南部まで導水するものである。CAWCDの業務は、CAP導水からの分水、CAP建設費の償還、CAP導水の運転管理である。

 

【沿革】​

  • 1946年、CAP建設推進のために、連邦議会に対してロビー活動を行うためのCAP協会が設立された。22年後の1968年、リンドン・ジョンソン大統領がCAP建設を承認する法案に署名し、CAP事業が決定された。

  • 1971年、CAP完成後、CAP施設の運転管理のためCAWCD:Central Arizona Water Conservation Districtが設立された。

  • 1973年、工事がHavasu湖から始まり、20年後、ツーソン市南部まで開通して完成した。総事業費は40億ドルだった(1980年代のドル円250円程度で計算すれば総事業費は1兆円)。ツーソン市は、1990年代になって初めてCAPから受水することとなった。

【現状の課題】

  • CAPとアリゾナ州政府は、水源の増強と節水プロジェクトに関して積極的に協力している。例えば、Brockダム湖ではメキシコ側に流出する水量を減らすための州間の協力、Yuma脱塩プラントのような脱塩や潅水地下水のプロジェクト、さらにメキシコとの2国間脱塩プラント構想などがそうである。

  • CAPは、また、ネバダ南部水道事業団との共同事業の可能性を模索している。

CAP導水事業(ハバス湖~フェニックス~ツーソン)

CAP導水事業(ハバス湖~フェニックス~ツーソン)

CAP-SRP相互接続施設

(CAP-SRP Interconnect Facility)

CAP-SRP相互接続施設

CAP導水路:トンネル区間

CAP導水路:トンネル区間

CAP導水路途中のpleasant湖

CAP導水路途中のpleasant湖

CAP導水:ツーソン市内の地下水注入施設

CAP導水:ツーソン市内の地下水注入施設

フェニックス市水道

【​浄水場の建設】

  • 1947年、市の最初の浄水場がVerde川に完成した。その後、いくつかの民間水道会社を買収して区域を拡張していったが、1952年には、当時、既に農業団体から農業用水を水道用に使う許可を得ていたSRPと市は協定を結び、SRPの水を購入し、市内に供給することになった。

  • 1952年から1975年の間、24th Street、Deer Valley、Val Vistaの3つの浄水場が、SRP運河沿いに建設された。2011年、Val Vista浄水場は更新不能として廃止された。

  • 1980年代半ばに市内にコロラド川からのCAP導水路が完成すると、1986年、CAP沿いにUnion Hills浄水場が新設された。2007年、市北部に給水するため、Pleasant湖浄水場も運転開始された。

  • 1990年、SRPとCAPが交差する地点で、2つの水路の接続工事が行われていたが、この接続施設CSIF:CAP/SRP Interconnection Facilityは、コロラド川の水をSRP区域に送水する能力を増強することとなった。

【地下水水源】

  • フェニックス市は、事業開始以来、200以上の井戸水源を開発してきた。しかしながら、1980年の州政府の地下水規制法に施行以来、ほとんどの井戸水源は、表流水水源への切換え、井戸の老朽化、取水効率の低下、水質悪化などにより稼働を停止している。現在は、22の井戸で12万m3/日の取水を行っている。

  • 市は、将来の需要増に対応するため、表流水を地下に貯留する「地下水涵養-再取水プログラムASR:Aquifer Storage and Recoveryを実施中である。

【地下水規制】

  • 1980年のアリゾナ州議会で成立した地下水規制法において、取水規制区域AMAs:Active Management Areasにおける水道用水、工業用水、農業用水の利水者に対して、積極的な節水目標を設定した5種類の「地下水管理計画」を策定するよう規定している。

  • AMAsは地下水規制を実施する地域を指定したものである。フェニックス市やメサ市はこのAMAsに含まれており、地下水の取水規制と地域での節水目標に従わなければならない。

  • フェニックス市は、州政府水資源局ADWR:Arizona Department of Water Resourcesの設定した要件を遵守している。1人当たりの使用量は、この30年間、大きく低減しており、ADWRの要件を上回る成果を出している。

【下水処理水の再利用】

  • フェニックス市は、非飲料用の灌漑用水、冷却用水、帯水層注入の大部分に、下水処理水の再利用水を使っている。最も大きな下水処理場は91st Avenue下水処理場である。この施設はフェニックス水道が運転しているが、フェニックス都市圏地域下水処理事業団SROG:Sub Regional Operating Groupと共有の施設である。SROGとは、Phoenix、Scottsdale、Tempe、Glendale、Mesa市で構成する共同事業体である。

  • 1973年に、フェニックス水道はアリゾナ公益サービスAPS:Arizona Public Serviceと、Palo Verde原子力発電所の冷却用水を送る協定を結んだ。同時に、Tres Rios湿原にも下水処理水を送ることとした。Tres Rios湿原は、自然の力で、下水処理水から栄養分や金属分を除去することとなる。この再利用は、現在も続いている。

  • フェニックス水道は、フェニックス市、ルーズベルト灌漑組合RID:Roosevelt Irrigation District、SRPの3者協定に基づき、RIDに下水の再利用水を送っている。その代替水として、フェニックス市と、インディアン保護区Salt River Pima Maricopa Indian Communityは、SRPからの水を受水することとなっている。

  • 2000年、フェニックス市は、CCWRP:Cave Creek下水処理場から市北東部の園芸用芝工場まで、再処理水専用の管路で送水する事業を始めた。2010年現在、平均7,500m3/日の稼働である。しかしこの施設は2025年には停止し、コロラド川の水に切り替えることを検討中である。

【下水処理場】

  • 周辺都市との共同下水処理場1ヶ所、及び、両市がそれぞれ単独で保有する下水処理場がある。

  • 高度処理水をPalo Verde原子力発電所の冷却水として売却

  • Buckeye農業団体とRoosevelt農業団体には灌漑用水を供給

  • 後者には年間36百万m3供給、これは、その代替措置としてPima-Maricopaインディアン保護区に年間36百万m3の飲料水を供給するという、画期的な1988年Salt River水利協定に基づく

  • バイオ肥料は食用でない穀物の肥料用に利用され、バイオガスは、2019年からグリーンエネルギー市場で売買

下水処理場と地下水注入施設

下水処理場と地下水注入施設

アリゾナ州政府による地下水規制

アリゾナ州政府による地下水規制

メサ市水道

  • メサ水道は、州政府水資源局ADWR:Arizona Department of Water Resourcesから、「100年持続可能水道」の指定を受けている。このことは、メサ水道が、都市水道が満たすべき水源の物理的、法的持続性、さらに水質、経営の持続性を持っていることを示している。

  • メサに水道には3つの主要な水源がある。コロラド川の水CAP(市東部と南部)、Salt川・Verde川の水SRP(市中心部)、そして域内全体にある地下水水源である。

  • 1980年、アリゾナ州は地下水規制法を作った。この州法は、地下水をめぐる多くの紛争を解決し、過剰汲み上げの問題を解決しようとするものであった。帯水層を守ることは極めて重要であることから、メサでは地下水水源は、緊急時や著しい渇水時の「バックアップ」であり、主要な水源に位置付けてはならないと考えられている。

  • メサ市下水道は、400km2の水道給水区域内の50万人に対して、下水道サービスを提供している。市の処理区域は大きく6つに分かれて、4つの処理場(うち2つは他都市との共同施設)で処理されている。主要な施設は、2,800kmの幹線管路、14のポンプ場、21の臭気除去施設、37の分岐施設などである。

メサ市水道の給水区域図

メサ市水道の給水区域図
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