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フィラデルフィア(160万人)

  • フィラデルフィアはペンシルベニア州南東部にある同州最大の都市。1776年、アメリカ建国の父がこの地に集結し全会一致で独立宣言を採決、アメリカ誕生の地である。ペンシルベニア大学などを擁する学術都市であり、その学生数は都市圏全体で約30万人と全米最多であるといわれる。

  • フィラデルフィア市はニューヨーク市とワシントン DC の中間に位置し、東海岸で2番目、全米で6番目の人口を持つ。総面積370km2、市内には Schuylkill(スクールキル)川などがある。約130km北東にニューヨーク、145km南西にボルチモア、200km南西にワシントンDCがある。

  • フィラデルフィア市の上下水道サービスはフィラデルフィア水道局PWD:Philadelphia Water Departmentが行っている。PWDは、同市内において上下水道サービスを提供するとともに、周辺都市への1つの用水供給事業、10の流域下水道事業を行っている。

ペンシルベニア州の位置図

ペンシルベニア州の位置図

フィラデルフィア市の位置

フィラデルフィア市の位置図

フィラデルフィア水道:概要

  • PWDは、水源として、デラウェア川系統とSchuylkill川系統の2つの系統を持っているが、前者が58%、後者が42%となっている。地下水は利用していない。

  • Baxter浄水場はデラウェア川沿いにあり、Belmont浄水場とQueen Lane浄水場は、Schuylkill川沿いに向かい合っている。3つの浄水場合計での取水量は250万m3/日である。配水池などの容量は200万m3/日しかないため、差の50万m3/日分は、どれかの浄水場で渇水になった時に取水できなくなった時期に取水できることになっている。

  • デラウェア川系統のBaxter浄水場からは平均75万m3/日の水を取水し、75万人に供給している。取水施設は市のTorresdale地区にある。

  • デラウェア川は3つの州にまたがっており、流域面積2,000km、30カウンティを含んでおり、400万人が住んでいる。取水地点より上流側の流域は70%が森林地域、17%が農地、10%が開発区域である。

  • もう1つの系統Schuylkill川は、延長は200km、支川数180で、流域面積は5,000km2である。流域はフィラデルフィア市北西部に位置し、11カウンティにまたがる300万人以上の人が住んでいる。そのうち150万人に水道を供給している。

フィラデルフィア水道の3か所の浄水場の位置図

フィラデルフィア水道の3か所の浄水場の位置図

フィラデルフィア水道:水源地域保全対策

  • PWDは、水源となっているSchuylkill流域とDelaware川流域のそれぞれについて、水源地域保全計画を作り、流域の汚染を守っている。2つの流域保全計画は、厳格な環境影響評価書に基づき、フィラデルフィア市民150万人と流域外の住民の水源を保全することを目的としている。

  • この流域保全計画は、安全飲料水法1996年延長法に基づいて市が行う環境影響評価などをベースとして策定されており、1つの万能対策を実行するのではなく、万能でなない対策を複数組み合わせて対応しようとする考え方、「マルチ・バリア」の考え方がとられている。即ち、緊急時に備えた体制準備、官民協力のネットワーク、汚染シミュレーションを行うコンピューター・モデルの利用、水質検査施設の整備、隣接州および連邦政府との協力、流域保全に資する開発計画の実施などを組み合わせたプログラムになっている。

Schuylkill流域保全計画

Schuylkill流域保全計画

Delaware川流域保全計画

Delaware川流域保全計画

フィラデルフィア:合流式下水道の改善
(Green City Clean Waters)

  • PWDは、3つの下水処理場、29のポンプ場、6000kmの下水管路、生物汚泥処理施設を保有している。下水処理場の能力は200万m3/日、最大では400万m3/日である。

  • PWDの下水道は60%が合流式である。そのため、毎年、雨期には、古い区域ではオーバーフローし、近くの水路に流出し、水路の汚染を引き起こしている。このことから、市は、州政府と連邦政府から、空気清浄法Clean Water Act等に基づいて、この水路汚染の85%削減を求められている。

  • このため、市は2011年に、汚染の削減を目的とした「Green City Clean Waters」という2036年を目標とした25年計画を策定している。その内容は、住民や地域社会の協力を求め、その低減対策への支援措置を行うものとなっている。

  • 合流式下水道に雨水ができるだけ入らないようにするために、雨樋利用プランターなど、市が推奨する設備の導入を市民に推奨しているので、その事例を紹介する。​​

雨樋利用プランターの概念図

​雨樋配水を直接排水するのではなく、一旦プランターに入れて、底部から、土壌でろ過された配水を地下浸透させる。​

雨樋利用プランターの概念図

地下浸透型舗装の庭への転換

地下浸透型舗装の庭への転換

雨樋利用プランターの一例​(金属製)​

雨樋利用プランターの一例​(金属製)​

公園の一部を地下浸透型に改造

公園の一部を地下浸透型に改造

フェアモント水道施設記念館(Fairmount Water Works)

  • フィラデルフィア市は、1776年 、合衆国建国の父がこの地に集結し全会一致で独立宣言を採決、アメリカという国が誕生したという歴史のある町である。そのため、市の水道施設にも歴史的に貴重なものがあるのでこれを紹介する。

  • ほぼ1世紀前、1909年、この施設は送水ポンプ場としての役目を終えた。この地域の産業勝野発展とそれに伴う水質汚染のために、市水道局が砂ろ過施設を導入するために浄水場を他の場所に移転したためである。1911年、かつては技術的にすばらしいポンプ場だった施設の大部分が、今では、フェアモント水道施設記念館(Fairmount Water Works)となっている。

  • 浄水場移転から10年間は、この場所は、後の競泳用プール、またはフィラデルフィアの学童用プールの先駆けとなった。1970年代になると、この歴史的建造物を保全しようという運動が起きた。1972年からは、水質保全法の制定もあり、PWDは、水質を守り、流域を保全を支援することの価値を人々に周知することおいて全米のリーダーとなった。

  • フェアモント水道施設におけるこのような活動の中で、PWDは、都市の水に関する永続的な教育施設の整備の必要性を痛感することとなる。2003年10月、40年間の努力の末、多くの市民と水道関係者の協力によって、国の歴史的建造物(National Historic Landmark)が保全されることとなった。

  • 現在は、この施設は、フィラデルフィア地域の貴重な都市環境教育の拠点となっており、また、州政府環境保護局によって、デラウェア川流域における公式の流域保全教育センターとして、また、シュルキル川については、国及び州の歴史的遺産区域として認定されている。

  • フィラデルフィア市のこのような環境教育の先進的取り組みを、連邦政府EPAも、野外環境監視室のモデル事業として後押ししている。

取水堰(斜めに設置)と旧ポンプ場(現記念館)
旧ポンプ場(現記念館)

写真上左:取水堰が斜めに設置されている。

    旧ポンプ場(現記念館)は堰右手前

写真上右:旧ポンプ場(現記念館)

写真下右:旧ポンプ場から取水堰を望む(当時の絵)

旧ポンプ場から取水堰を望む(当時の絵)
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