20250409公開開始
20250425更新
サンフランシスコ湾岸都市圏
サンフランシスコ(87万人)・サンノゼ(54万人)・オークランド
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サンフランシスコは、ロサンゼルスと共にカリフォルニア州の経済、工業の中心地として知られている。当時は、人口1,000人程度だったといわれる1848年に金が発見され、いわゆる「ゴールド・ラッシュ」が起こり、翌年の1849年には人口2.5万人にもなったといわれる。
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サンフランシスコ市は、現在では人口80万人の都市となっている。しかし周辺の都市も含むサンフランシスコ都市圏としての人口は600万人で、しばしば「ベイエリア」と呼ばれている。この地域はサンフランシスコを中心に、隣接のオークランド市やその近郊の都市を含め、サンフランシスコ湾の湾岸地域全体に広がっている。
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ベイエリアの水道はこのような都市事情を反映して、サンフランシスコ市の上下水道電力企業局(SFPUD:San Francisco Public Utilities Commission)が、サンフランシスコ市内の水道だけでなく、ベイエリア全体の水源開発において中心的な役割を担ってきている。
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その水源開発の中心プロジェクトが、ヘッチ・ヘッチー(HH)広域水道:Hetch Hetchy Regional Water Systemであり、SFPUDがその施設を所有し、運転し、市域以外の地域にも用水供給事業を行っている。
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この地域の末端水道は、サンフランシスコ水道を除き、各市、各カウンティが、いろいろな形で連合し、創設した水道事業者によって経営されている。その代表的な水道事業者が、サンフランシスコ市の対岸にあるオークランド市を中心とした東部湾岸水道企業団EBMUD:East Bay Municipal Utility Districtである。
サンフランシスコ市位置図

サンフランシスコ都市圏のカウンティ位置図

サンフランシスコ:ヘッチ・ヘッチー広域水道
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サンフランシスコ都市圏の東方にヨセミテ国立公園があるが、その公園内の北西部にヘッチ・ヘッチーHetch Hetchyと呼ばれる場所がある。現在のヨセミテ渓谷にも劣らない素晴らしい渓谷があったと言われていたが、サンフランシスコの人口が急増し水不足が懸念されるようになると、ダム建設候補地としてこの渓谷が注目された.
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自然保護派の反対活動は激しかったものの、1906年に発生したサンフランシスコ地震災害を契機として水不足が深刻化したため、世論は人道的な立場からダム開発に傾き.1925年、オショーネシーO'Shaughnessyダムが造られ、ついにヘッチ・ヘッチー峡谷は湖底に沈んでしまった.
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当時は自然保護団体との間で開発か保護かで大論争となったが、第28代大統領ウィルソンがダム建設に署名し、ダムが建設されることになった。このことがアメリカの連邦政府国立公園局が発足するきっかけになったと言われている。
【ヘッチ・ヘッチー広域水道(HH広域水道)】
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HH広域水道はSFPUCが所有、運転する施設で、貯水池、トンネル、管路、ポンプ場、浄水場などで構成され、Sierra Nevada流域の水をBay Areaの4カウンティに給水しているものである。
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HH広域水道は2つに分けられる。1つは、ベイエリア末端水道で、もともとは、Spring Valley水道会社が建設したものだが、後に、1930年、サンフランシスコ市が買収したものである。
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もう1つはHH広域水道である。Tuolumne川から導水するもので、1934年にサンフランシスコ市によって建設されたものである。HH広域水道は、San Francisco, Santa Clara, Alameda, San Mateo, Tuolumneのカウンティの270万人に給水サービスを提供している。
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サンフランシスコ市民に送水されている水の平均15%の水が、Alameda and Peninsulaの流出水からで、残りの85%は、Sierra Nevadの雪解水や雨水がTuolumne川と関連施設を通じて送水されている水である。
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HH広域水道は、ヨセミテ国立公園内のHetch Hetchy貯水池(O'Shaughnessyダム)から始まる。ほかにも他の貯水池もある(Calaveras、SanAntonio、Cristal Springs、Pilarcitos、San Andrea)。この貯水池の水は、水力発電をしながら、San Joaquin導水路まで到達する。途中には、Tesla紫外線消毒施設、Coast Rangeトンネルがある。
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また浄水施設としては、Tesla紫外線消毒施設、Sunol Valley浄水場、Harry Tracy浄水場がある。
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ベイエリアとサンフランシスコ半島内の導水施設としては4つの主要な幹線があり、その途中には、Irvingtonトンネルの1と2、ベイトンネル、Cristal Springsバイパストンネルの4本のトンネルがある。
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HH広域水道は、上流域の基幹的水道施設と基幹的電気施設も運転管理している。この流域は、カリフォルニア州全体の水資源の中心的地域であるため、HH事業流域の貯水池群の運転はカリフォルニア州全体の水運用上、大きな役割を果たしている。
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電力事業は、SF市内全域の電力供給に責任を負っている。この事業はSFPUDが保有する事業となっている。
ヘッチヘッチー広域水道

ヘッチヘッチー貯水池

サンフランシスコ:市内の上下水道
【市内の水道】
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サンフランシスコ市内の給水はSFPUCが行っている(SFPUDそのものは、上水道事業、下水道事業、電力事業の3つの事業を経営)。配水管延長2,000km、市内の配水池12、配水塔8、合計貯留量150万m3の施設を保有している。
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SFPUC水道の中心はヘッチヘッチー導水であるが、その他に域内に小規模な地下水水源も保有している。Sierra Nevada山脈、Alamedaカウンティ、San Mateoカウンティ、そして市内及びSan Mateoカウンティにあり、その源は、雪解け水、雨水、人工涵養された地下水などである。
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サンフランシスコ水道は消防用の水道も持っている。緊急消防水道EFWS:Emergency Firefighting Water Systemといわれるもので、2011年からはWater Enterprise社が運転している。
【市内の下水道】
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SFPUCはサンフランシスコ市内の合流式下水道の運転管理を行っている。この下水道は、市内の家庭汚水と、その他の地域内の雨水を集め、処理し、排出している。
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汚水と雨水は3つの処理場で処理されている。Southeast処理場、Oceanside処理場、North Point雨期処理施設である。North Point施設は、雨期のみの運転である。
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施設能力は、乾期においては26万m3/日、雨期においては220万m3/日、主要な施設は、ポンプ場、排水施設、及び、市内至るところに200milガロンの大きな地下雨水貯留施設などである。
【市内の電気】
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SF市のCCAプログラムに基づいて、太陽光、風力、水力などの再生可能エネルギーからの電力を供給している。この再生可能エネルギーは、Pacific Gas&Electric社が彼らの配電網を通じて使用者に供給されている。この事業の電力は、カリフォルニア州RPu50%以上の認定を得ており、中でもSuperGreen電力は同100%認定となっている。
ヘッチヘッチー導水からのサンフランシスコ市内への送水ルート

サンフランシスコ市内の主要な下水道施設


浸水対策地区
合流式下水道排出地点
ポンプ場及び圧力管
グリーンインフラ施設
下水処理場
雨水遮水管渠・トンネル
グリーンインフラ補助金対象施設
浸水対策管渠
ポンプ場及び圧力管
Central Bayside雨水システム改良プロジェクト
合流式下水道排出地点
湾岸都市圏の水道(オークランド市等)
EBMUD:East Bay Municipal Utility District
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EBMUD は1923年に設立された非営利の自治体で、Sierra Nevada のMokelumne River川に建設されたPardeeダムから150kmのMokelumne導水路を経て、東部ベイエリア(中心はオークランド市)に水道サービスを提供している。
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EBMUDは、オークランド市が属するAlamedaカウンティ、及び、隣接のContra Costaカウンティの都市圏40万人に対して水道を、また74万人に対して下水道サービスも提供している。オークランド市は、サンフランシスコの約13 km東に位置し、サンフランシスコ湾の東岸、イーストベイと呼ばれる地域の中核都市である。
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EBMUDは、また、ベイエリアに40か所以上の下水処理場と2.5万kmの管路を保有し、サンフランシスコ湾に毎年数百万m3の下水と雨水を排出している。また、1951年以来、メイン下水処理場で下水処理を行ってきたが、このことは、この地域に住む70万人以上の人々の生活の質を守り、サンフランシスコ湾の魚類、哺乳動物、昆虫類、絶滅危惧種を守ることに貢献している。
Mokelumne導水

EBMUDの水道給水区域と下水道の処理区域

湾岸都市圏の水道(サンノゼ市等)
サンタクララ・バレー広域水道:Santa Clara Valley Water District
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サンタクララ・バレー広域水道は、カリフォルニア州法に基づいて設立され、カリフォルニア州の特別目的自治体Special Districtとして運営されている。その管轄区域はサンタクララ・カウンティ全体である。
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バレー広域水道はカウンティにおける主要な水道事業者であり、13の末端事業者を通じて190万人に給水している。
【受水】
- Sierra Nevada山脈からの雪解け水は数百kmの川を流れて、Sacramento-San Joaquin Delta地域に到達する。さらにその水は、カウンティ内の浄水場や地下水の帯水層に到達し、地域内で使用される水の半分を賄っている。州政府と連邦政府との契約において、毎年、この水を、我々がどの程度取水していいかが決められている。バレー広域水道にとって域外導水とは、SWP、CVP、及び、サンフランシスコ水道のHetch Hetchy導水のことである。
- SWP:State Water Projectはバレー広域水道の水源の1つである。カリフォルニアSWPは、全米でも最大規模の導水事業である。その主たる目的は、北部カリフォルニア、ベイエリア、サンホアン・バレーなどの地域の都市用水、農業用水を供給することである。7割が都市用水、3割が農業用水である。デルタ地域の水質改善、洪水調節、環境保全なども目的としている。
- 1965年、SWPはサンタクララ・カウンティに給水し始めた。SWPの水は、バレー広域水道のPenitencia浄水場まで導水されている。
- CVP:Central Valley Projectについては連邦政府の事業であるが、もともとは、1920年、州政府において計画策定の作業が始まったものである。計画の実施は、1933年、州議会で承認され、250億円の債権発行が住民投票でも認められた。
- しかし、折からの大恐慌のために、州政府はこの債券発行ができなかったため、連邦政府は、雇用創出を目的とした中央平原水資源開発事業CVP:Central Valley Projectとして事業を実施することとした。
- CVP事業は連邦政府水資源局によって建設、運転されているが、州内で開発された水860万m3の約20%を貯留、導水する世界最大規模の事業である。この事業は、巨大な貯水池や水路から成り、5,000MWHの発電をするものであった。水は、州北部のShasta湖からサンホアン・バレー南部のBakersfieldまで720km導水されている。CVP事業は、250万人の住民と12,000km2の農地に水を提供している。
バレー広域水道は、1977年、連邦政府水資源局と受水契約を結び、1987年に受水を始めた。我々のCVP導水は、デルタ地域、TracyのC.W. “Bill” Jonesポンプ場を経て、San Luis湖まで運ばれている。そこからは、トンネル、ポンプ場などを経てサンタクララ・カウンティまで到達する。
【地下水】
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サンタクララ・カウンティ内の最大の貯水池は我々の足元にある。その地下水帯水層は、我々の10の表流水貯水池よりも多くの水を保持している。カウンティ内の地下水管理者として、我々広域水道は、池や水路を通じて、域内地下水や受水した水を注入している。
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地下水の取水が補給される以上の速度で行われた場合、地下水水質の低下を来す。将来とも水を確保し、渇水に備えて貯留を行い、地盤沈下を防ぐためには地下水位の保持が不可欠である。
【再処理水】
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下水の再処理水は、渇水に強く、域内で管理できる水資源を生み出すものだ。カリフォルニア州北部で最大の下水の高度処理施設であるシリコンバレー高度処理センターSilicon Valley Advanced Water Purification Centerでは、既存の技術、即ち、マイクロ・フィルター、逆浸透膜、紫外線消毒を利用して、純粋に近い水質の水を供給している。
【節水】
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節水は、将来の水源確保のために重要である。我々の長期計画では、2030年まで、毎年、12万m3の節水を目指している。1980年代以来、カウンティ人口は25%増えたが、給水量はほぼ横ばいである。
【ダム/貯水池】
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カウンティ内の10の貯水池の総容量は、34万世帯の使用量の5年分である。サンフランシスコ湾に流出する水を貯留している。
【浄水場】
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広域水道は3つの浄水場を持っており、83万m3/日の能力を有している。
【浸水対策】
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広域水道は、サンタクララ・カウンティ内の延長500kmにわたるクリークや水路を管理している。浸水対策のために、我々は、Guadalupe川とLower Silverクリーク地域浸水対策事業を行い、10万区画の浸水から守っている。その他、今後5年間に25,000区画を守るために18の浸水対策を実施している。
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サンタクララ・カウンティ内の1,300kmに及ぶクリークや川の1/3程を広域水道は所有しており、水路維持、土嚢準備、クリーク維持、生態保護等、環境保全と生態系保全に取り組んでいる。またそのために、他の市やカウンティと協力している。
サンタクララ・バレー広域水道

サンタクララ・バレー広域水道の受水団体

サンタクララ・バレー広域水道の浸水流域区分
