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カリフォルニア州における水資源開発:
​連邦政府CVP事業とカリフォルニア州SWP事業

  • ロサンゼルス都市圏にしても、サンフランシスコ都市圏にしても、都市圏人口の都市用水需要に対応するためには、かなりの規模での広域的な水資源開発が必要であった。そして実際に、この問題は、カリフォルニア州の中央部を占める平原全体(セントラル・バレーCV平原:Central Valley)を含めて広域解決されている。

  • カリフォルニア州のCV平原は、サンフランシスコ・ベイエリアへの出口になっているカーキネス海峡Carquinez Straitを除き、全て、山に囲まれている。Cascade山脈とSierra Nevada山脈が標高4,200m、西のCoast Range山脈は標高2,400mである。また、CV平原には2つの大きな河川がある。Sacramento川とSan Joaquin川である。

  • CV平原には、厳密には、サンフランシスコもロサンゼルスも含まれないが、その都市圏を含めて、灌漑、都市用水、環境保全などを含めた総合開発が、連邦政府、州政府、自治体などの連携の下に進められた。​その大規模な水資源開発の中の代表的な開発が、​連邦政府CVP事業とカリフォルニア州政府SWP事業である。

  • CVPは、カリフォルニア州の中央部CV平原を貫く、ダム、貯水池、水路、水力発電等の多目的水資源開発事業であり、この事業は、CV地域の洪水リスクの軽減と都市用水開発、さらには、サンフランシスコのベイエリア(湾岸地域)、サクラメントの都市用水開発、水力発電、リクリエーション地域開発、地域の環境保全を目的としている。

  • CVPは、1938年、サクラメント川のShastaダムの着工で始まった。SWPは、CVP施設も活用しながら、Deltaポンプ場と、Delta ポンプ場からSan Joaquinを経由してカリフォルニア州南部まで続く700kmのCalifornia導水路から成る事業であり、カリフォルニア州南部に水を届けている。

セントラル・バレーCV平原:Central Valley

セントラル・バレーCV平原における導水路事業

セントラル・バレーCV平原:Central Valley
セントラル・バレーCV平原における導水路事業

州政府SWP事業

​連邦政府CVP事業

​都市導水事業

デルタ地域

カリフォルニア州における水資源開発:CVP事業

​【セントラル・バレー・プロジェクトCVP:Central Valley Project

  • CVPは、カリフォルニア州の中央部CV平原を貫く、ダム、貯水池、水路、水力発電等の多目的水資源開発事業であり、連邦政府内務省の環境再生局(Bureau of Reclamation)の事業である。

  • この事業は、CV地域の洪水リスクの軽減と都市用水開発、さらには、サンフランシスコのベイエリア(湾岸地域)、サクラメントの都市用水開発、水力発電、リクリエーション地域開発、地域の環境保全を目的としている。

  • CVPの建設は、1938年、サクラメント川のShastaダムの着工で始まった。現在、ダム・貯水池20、水力発電11、幹線水路800kmのネットワークにより、150億m3の貯水容量が確保されている。

  • CVPの水供給の契約は、カリフォルニア州内の58カウンティの29事業者と250件以上あり、農業用水として60億m3、都市用水として70万m3(250万人に1年間供給できる量)を供給している他、野生生物やDelta地域の河川維持用水としても水を供給している。

デルタ地域

デルタ地域

CVP導水路事業にける主要貯水池

CVP導水路事業にける主要貯水池

CVP導水路事業の概要

CVP導水路事業の概要

カリフォルニア州における水資源開発:SWP事業

​【カリフォルニア州水資源開発事業SWP:State Water Project】

  • SWPは、ダム22か所、Deltaポンプ場、Delta ポンプ場からSan Joaquinを経由してカリフォルニア州南部まで続く700kmのCalifornia導水路から成る。Feather川の Orovilleダムを起点として、Riversideカウンティ近くのPerris湖が終点となる水路である。

  • California導水路は、Tehachapi山地にはその山を超えるために、600mの揚程の巨大なポンプ場があり、カリフォルニア州南部に水を届けている。SWPは、San Joaquin盆地の灌漑用水を提供するとともに、ロサンゼルス都市圏やサンディエゴ市の都市用水の主たる水源となっており、カリフォルニア州政府水資源局によって運転されている。

SWPの施設概要
カリフォルニア導水路
Delta地域
Orovilleダム

SWPの施設概要

Orovilleダム

Delta地域

カリフォルニア導水路

A. D. Edmonポンプ場

A. D. Edmonポンプ場

A. D. Edmonポンプ場

コロラド川総合開発事業

【河川総合開発事業】

  • コロラド川は7つの州にまたがる大河川である。古くから取水権について、関係者間で紛争が絶えなかった。特にカリフォルニアの水需要に対応するため、大規模ダム、大規模水路の建設が期待されていたが、関係者間の水配分の協議がまとまらない状態がつづいていた。

  • しかし1922年になって、流域7州(Arizona、California、Nevada、New Mexico、Wyoming、Colorado、Utah)と連邦政府の間で「コロラド川基本協定」が成立し、具体的な開発計画の検討が進められることとなった。

  • 実際に計画が具体化されたのは、ニューヨーク市場で株価暴落をきっかけとしたF.ルーズベルト大統領による「ニューディール政策」である。この政策の下、コロラド川ではない別の水系であるテネシー川(ミシシッピ川水系)で河川総合開発事業が協力に推進された。その機運に乗った形で、コロラド川開発も始まり、フーバーダム(ミード湖)、パーカーダム(ハバス湖)、グレンキャニオンダム(パウエル湖)などが、順次、建設された。

【コロラド川分水協定】

  • 1900年代初め、コロラド川流域の7州は、コロラド川の水配分について交渉を始めた。最終的に、1922年、流域を「上流流域」と「下流流域」に分け、水量を折半することとなった。後に、1944年にはメキシコと条約が締結され、アリゾナと同量がメキシコにも配分されることとなった。

  • 1922年の協定内容は、流域を「上流流域」(New Mexico、Wyoming、Colorado、Utah)と「下流流域」(Arizona, California, Nevada)に分け、それぞれ、92億m3/年配分することとした。

  • 「下流流域」では、92億m3/年を3州で分割することとなったものの、しかし「下流流域」内部における配分交渉は長引き、アリゾナ州が基本協定に調印したのは1944年になってからのことだった。​

  • 「下流流域」内部における現在の配分は、AZ:34 CA:54 NV:3億m3/年となっている。

  • 現行分水協定について、​最近では、河川水量に対して配分量が大き過ぎるという見方が多くなり、その見直しの検討が進んでいる。合わせて利水者側の節水が奨励され、地下水の人工涵養のための再注入、下水処理水の再利用などが積極的に進められている。

  • コロラド川の水をどう配分するかは、「コロラド川憲法」と言われる協定によって規制されているが、それは、州間の協定、法令、最高裁決定、メキシコとの条約、その他の契約、ガイドラインなどの総称である。

【現況】

  • Denver, Salt Lake City, Las Vegas, Phoenix, Los Angeles , San Diegを含む都市の4,000万人に水を供給している。

  • インディアン保護区30地区・灌漑農地20km2・国立公園・野生動物保護区・リクリエーション地域などへの供給を含む。

  • 「上流流域」・「下流流域」合わせて、貯水池容量は合計740億m3

  • 「下流流域」での取水量は92億m3/年

  • Powell貯水池とMead貯水池で米国西部州のために水力発電

【フーバーダム】

  • 上流域の中心的水源となっているのはグレンキャニオンダム(Powell湖)、下流域の中心的水源となっているのはフーバーダム(Mead湖)である。また、下流域でカリフォルニア州とアリゾナ州が取水しているのは、フーバーダムよりさらに下流側にあるパーカーダム(ハバス湖)である。

  • そのうちフーバーダムは、アメリカを代表する大ダムで、世界的に見ても最も有名なダムの一つである。長さ177km、周長885km、最大深さ152m、湛水面積639平方キロメートル。周囲は、ミード湖国立レクリエーションエリアに指定されている。アメリカの最も人気のありレクリエーション地域のひとつで、水泳、ボート、釣りなどで年間900万人が訪れる。

  • 1931年に着工し、1936年に完成。建設事業は、当時のルーズベルト大統領のニューディール政策の下で、経済対策としても推進された。コロラド川の氾濫防止だけでなく、ラスべガスへの電力供給や灌漑、ロサンゼルスへの水道水の確保など多目的ダムである。

  • アリゾナとネバダの州境にあって、取水口が二つあり、一つはネバダ用、もう一つはアリゾナ用。現在発電能力は2,074 MWでアリゾナ、カリフォルニア、ネバダの3州に電力を供給している。

  • ダムの名前は、第31代大統領の Herbert Hoover にちなんだもの。ミード湖の名称は、フーバーダム建設当時の開拓局長官エルウッド・ミードに因んだもの。

コロラド川位置図

コロラド川位置図

コロラド川流域州の位置図

コロラド川流域州の位置図

ロサンゼルス都市圏への導水:コロラド導水

  • コロラド導水路は、ロサンゼルスへの水道水の確保などのために、MWDが中心となって建設されたものである。延長は400km、起点はパーカーダム、終点はマシュー湖で、その途中に、ポンプ場5か所、トンネル1か所、中継貯水池2か所がある。

【パーカーダム】

  • パーカーダムは世界一深いダムの1つで、内務省の環境再生局がMWDの負担で建設したダムである。1938年に完成し、その後1942年に発電が始まった。パーカー市(アリゾナ)の北東25km、フーバーダムの下流250kmにあり、アリゾナ州とカリフォルニア州にまたがっている。

  • MWDは、水力発電施設の50%の事業費を負担し、コロラド導水路のポンプ導水のための全電力の半分の供給を受けている。残りの電力は、西部電力配給会社Western Area Power Administrationが他のユーザーに販売している。

  • パーカーダムが作るHavasu貯水池は、延長70km、貯水容量8億m3で、利水の他、フーバーダムからの放流を調整する洪水調節の木野も持っている。

【San Jacintoトンネル】

  • San Jacinto山は、カリフォルニア州南部で2番目に高い山である。San Jacintoトンネルは延長20kmで、完成まで6.5年かかった。工事は、当初、民間に発注されたが、労働者のストライキなどもあり、進捗が遅いため、MWDが引継ぐこととなった。このトンネルは導水路延長全体の38%を占め、450万m3/日の通水能力を持つ。

【マシューMathews湖】

  • マシュー湖はコロラド導水路の終着点として選ばれたのはMWDの給水区域のうち最も標高の高い場所だったからである。標高420mで、MWDの給水区域の大部分に自然流下で供給でき、2.2億m3の貯水容量を持っている。この貯水池は、コロラド導水路の2/3の水量を受水しており、残りは、San Diego 市などに送水されている。

  • マシュー湖のダムと取水塔は、1933年、コロラド導水事業と同時に始まり、1939年に完成した。1940年2月、コロラドの水がカリフォルニアに届いた。1年後、パサデナ市が導水路の最初のユーザーとなった。取水塔は1960年に更新されて、現在も稼働中である。

  • 1995年、MWDは、カウンティ、連邦政府、州政府の環境関係機関と協力し、マシュー湖周辺の環境保全を行うこととなった。この環境保全区域では、原則、魚の採取が禁止された(後に、捕獲されて湖に放流された魚のみ採取可となった)。

カリフォルニア州の大規模導水路

カリフォルニア州の大規模導水路

コロラド導水

州政府SWP事業

​連邦政府CVP事業

​都市導水事業

デルタ地域

ロサンゼルス導水

ロサンゼルス都市圏への導水:ロサンゼルス導水

  • ロサンゼルス導水は、オーエンズOwens川、モノMono湖流域、シエラSierra山脈南部の東側斜面にある複数の貯水池から導水しているもので、ロサンゼルス市が建設したものである。延長350kmの第1水路は1913年に完成したものである。第2水路は1970年に完成したもので、能力は第1水路の50%である。2つの水路でLA市に160万m3/日の水を送水している。

  • 第1水路は、カリフォルニアのオーエンズ川からロサンゼルス市へ導水する延長350kmの自然流下の水路である。1928年に聖クラリタ峡谷とベンチャラ郡に洪水をもたらした「聖フランシスダム」の破滅的損壊があったり、オーエンズ盆地の農民のストライキがあったりしたが、現在も使われている。

  • 第2水路は、オーエンズ湖のすぐ南のハイウィー貯水池から始まるモノ盆地からの水利権を最大利用するように建設された。ほぼ、一次ロサンゼルス導水路に並行し、延長220kmである。1970年に完成した。

ロサンゼルス導水路

ロサンゼルス導水路

アリゾナ州の地下水規制:AMAとINA
(Active Management Areas Irrigation Non-Expansion Areas)

  • アリゾナ州の「1890年地下水規制法」は、経済の成長を支援するため、地下水資源の積極的管理を行うことを目的としている。主に都市部においては、地下水への依存度が高い地域をAMA区域:Active Management Areasと指定し、その区域内での地下水取水を規制し、主に農村部においては、地下水を利用した灌漑に対する土地をINA区域:Irrigation Non-Expansion Areasと指定し、その区域内での地下水取水を規制することとしている。

  • 現在、AMA区域として、Prescott, Phoenix, Pinal, Tucson, Santa Cruz, Douglasの6カウンティが指定されている。指定されたAMA区域では、それぞれ、その地域の特性や利水者の実情に応じて定められる目標を設定した地下水保全プログラムを実行しなければならない。

  • Phoenix, Prescott, Tucsonの3つのAMA区域の目標は、新規取水が、既存取水量のうち毎年更新される分を上回らないという「safe-yield」の目標となっている。Pinal AMA区域の目標は、区域が基本的に農業地帯であることから、将来の飲料水等の非灌漑用水の確保を考慮し、現状水準を維持するという目標が掲げられている。Santa Cruz AMA区域の目標は「safe-yield」目標と、地域内の地下水位の長期的低下をきたさないという目標の2つの目標が掲げられている。

  • INA区域における規制は、灌漑用水として地下水取水する場合のメータの設置、水資源局への届出義務、年1回の報告義務などである。現在、INA区域としては3つの区域が指定されている。

  • Joseph市とDouglasの2つのINA区域においては、1975年1月1日から1980年1月1日までの間、法的に灌漑可能な土地については継続して灌漑可能であるとされている。もう1か所のHarquahala INA区域においては、灌漑の権利のある期間は1976年1月6日から1981年1月6日までである。ただし、灌漑施設に対して相当量の投資を実行していると、アリゾナ州政府水資源局長が認める場合は、灌漑可能であるというような規制となっている。​​

​【フェニックス都市圏の州規制への対応】

  • 1993年、アリゾナ州法により、CAP導水地域内の3カウンティ(Maricopa・Pinal・Pima)がAMAとして指定された。この州法に基づいて、「中央アリゾナ地下水再生事業団CAGRD:Central Arizona Water Conservation District」が設立され、地下水保全の役割を果たすこととなった。

  • CAGRDの任務は、農業者や水道事業者に対し、アリゾナ州の水道法令遵守規則に適合していることを証明する手法を提供することである。同規則においては、地下水を利用する水道事業者は、その地下水が100年間維持できなくはないことを証明すべきことが規定されている。即ち、その区域内の一部または全部で地下水を取水している水道事業者は、取水井戸の水源となっている地下水は持続性があるという評価を、CAGRDから取得する必要がある。

  • その持続性評価を得た取水井戸も、未来永劫、有効なわけではない。その場合、その水道事業者は取水できなくなるが、それでも、CAGRDの構成団体になると、その地域で地下水位の低下が起こっていたとしても、お金を払って、再生可能な地下水を得ることができる仕組みになっている。このため、CAGRDの構成団体には大きな変化がもたらされている。​

アリゾナ州の地下水規制区域

アリゾナ州の地下水規制区域
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